TOPページへ ! 
4.22 第5回口頭弁論
国賠裁判提出の原告第3準備書面要旨
   徳島刑務所、医療センターの医療放棄・過誤を追及
 原告第3準備書面は国の反論を全面的に批判するとともに、裁判所から要求されていた被告の注意義務違反と星野文昭さんの死亡との因果関係を、①徳島刑務所、②手術前、③手術後の3つの時期に分けて、鮮明に主張しています(以下編集部要約)。

■徳島刑務所
 2018年8月22日に星野さんは激烈な腹痛で倒れました。急性腹症でした。徳島刑務所の医師は「腹痛」と診断し、消化管の疾患を疑い、直後に便潜血検査を、また、10月には胃カメラもしましたが、いずれも異常がなく、それ以上の原因究明を放棄しました。医師が普段診察に使用するテキスト『今日の診断指針』によれば、「急性腹症」の原因解明には腹部エコーないし腹部CTは必須とされています。遅くとも、消化管の疾患でないことが分かった10月時点で、他の原因究明のためにエコー検査をしなかったことは検査義務違反です。
 しかし国は、星野さんは刑務作業等「特段の支障なく」生活していた、その時点でエコー検査等すべき法的義務はなかったと居直っています。
 星野さんは8月に倒れて以降、食事を見ただけで吐き気を催すほどの食欲不振が続き、ご飯が固くて食べられず、お茶漬けにして流し込むようにして食べていたとカルテに記載されています。これを「支障なく生活していた」など、断じて許せません。
 2018年10月の段階でエコー検査をしていれば、腫瘍(しゅよう)は早期に発見できました。この時点であれば、手術はより安全に実施され、術中術後の出血も少なく、星野さんが生存していた可能性はきわめて高く、検査義務違反と死亡との因果関係は明白です。

■手術前
  東日本成人矯正医療センターの資料によれば、星野さんの肝臓はC型肝炎でも肝硬変でもなく、巨大な腫瘍も1個で、肝機能も大きな問題はありませんでした。肝臓がんはもともと肝炎や肝硬変がある人に起こることが多い病気です。その場合、肝臓全体がもろくなり、残存機能も低下しており、手術の成功率も高くありません。
 したがって、星野さんの場合、肝細胞がん切除手術の成功率ではなく、生体肝移植のドナー(肝臓提供者)側の成功率を参照する必要があります。日本では生体肝移植6000例中、ドナーが死亡したのは1例のみで、極めて高い成功率です。この生体肝移植でも15%の腹腔(ふくこう)内出血が生じ、その内25%で再開腹が行われています。適切な術後管理をあらかじめ準備することで、これだけの成功率が維持されています。国、医療センターは適切な施設であったと主張していますが、術後腹腔内出血を想定し、再開腹を行う体制がなかったのです。
 転医して適切な施設で行うか、これに匹敵する体制を整えていれば、星野さんの命は救われた可能性は極めて高く、これらの義務違反と死亡との因果関係は明らかです

■手術後
 星野さんは手術後、腹腔内出血が原因でショック状態に陥りました。ショックとは体内を回る血液量が減少している状態で、放置すれば死に至ります。ところが国は、血圧が極めて低いこと、尿がほとんど出ていないこと、意識レベルが落ちていること等、ショック状態を示す重要な症状を見ないで、ショック状態を否定し、執るべきだった処置の放棄を居直っています。
 血圧が低下し、ショック状態に陥った星野さんに対しては、エコー検査での腹腔内出血の確認、血液検査、再開腹と止血処置が必要でした。少なくとも23時の検査で、ヘモグロビン値の低下から貧血(=出血)が明白に疑われた時、これらの処置は不可欠でした。
 ところが星野さんは一晩放置されました。エコー検査も、腹腔内出血の確認も翌朝になってからのことでした。しかし、その時はもう手遅れでした。
 これら注意義務違反(医療放棄)と星野さんの死亡との因果関係は明白です。


星野新聞第115号 掲載