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12・3国賠第3回裁判へ
獄中医療のあり方変える裁判に



 12月3日、星野国家賠償請求訴訟の第3回裁判が行われます。ここで弁護団、訴状に対する国の許しがたい居直りに対して全面的な反論を行います。鋭意作成中の反論の概要を藤田城治弁護士に紹介して頂きました。人の命を顧みない新自由主義の本質が獄中医療に端的に表れています。
徳島刑務所① がんと知り隠す
 徳島刑務所は、昨年(2019年)2月に行った定期健康診断(血液検査)で、星野さんの肝機能障害を疑わせる数値が記録されたため、3月1日エコー検査と腫瘍(しゅよう)マーカー検査を実施しました。そこで巨大な腫瘤(しゅりゅう)の存在と肝臓がんを示す数値が確認されました。状況としては、巨大な肝臓がんになっていることは明らかで、速やかに精密検査、治療に進まなければいけませんが、3月14日に更生保護委員との面接が迫っていた星野さんにこの事実を知らせなかっただけでなく、更生保護委員会にも知らせませんでした。
 仮釈放審理においては、「心身の状況」として、受刑者の健康状態も考慮されることとなっており、巨大な肝臓がんに罹患(りかん)していることは仮釈放をすべき事情として考慮されるべき事項です。徳島刑務所は、更生保護委員会が星野さんを仮釈放をしない判断をするまで、更生保護委員会にも星野さんにも、このがんのことを隠していたことが分かりました。
 本件は星野さんの医療を巡る問題であり医師の協力は必須です。この間弁護団は、がん専門の病院で手術に当たる最前線の医師を始め、複数の医師のご協力を頂き問題点を洗い出してきました。


徳島刑務所② がんの進行放置

 星野さんの体重は、2018年2月まで、おおむね57㌔前後で安定していましたが、以後、7月には54㌔、倒れた8月には52㌔、2019年になると51㌔と減少が続いていました。食欲がない状態も続いていました。しかし2018年内に徳島刑務所が行った検査は10月の胃カメラ検査だけでした。胃に異常はないことが確認されたら、次の原因を疑い、他の検査をするのが当然です。しかし、徳島刑務所は、体重の減少は「夏の暑さのせい」「ステロイドをやめたから」などと、的外れな推論をし、がんの進行を放置しました(しかし、これは1年以上前のことですし、ステロイド投与で体重増加はあっても、中止で減少することはありえません)。2019年2月の定期的な血液検査で肝障害を示す数値が記録されたところで、ようやくエコー検査をし、がんの存在に気づきました。
 星野さんのがんは、14㌢×11㌢という「巨大肝細胞がん」でした。手術の技術と同等、いや、それ以上に、術後の急変に備えた体制を準備しておくことが重要です。

医療センター 術後ケア体制の致命的な不備
 東日本成人矯正医療センターはICU(集中治療室)に準じた設備を有していると主張しています。ICUには患者2人に1人の看護師と専任医師が常駐する必要がありますが、手術後29日午前1時から5時まで、全くケアがされていない(記録が一切ない!!)のはICUとしての人的な体制がなかったことを示しています。
 手術が終わって間もない午後6時以降は、血圧は90を下回っていました。90を下回っていることは、術後出血によるショック状態にあったことを示しています(6時台には「白い馬が何頭も見える」と星野さんが言っていたと記録されていますが、これはショック状態による術後せん妄の典型的な症状です)。医療センターは、昇圧剤を投与して血圧が回復していたから、適切に対応していたと主張していますが、医師によると、これはインフルエンザの患者に解熱剤を投与するようなもので、対症療法に過ぎず、「治療」ではありません。腹腔内での出血という根本原因を放置していたことは明らかです。
 また、このような大手術の時には、主治医は急変に対応できるよう病院にいるのが通常ですし、少なくとも、深夜でも電話があればすぐに駆けつけられる体制(オンコール体制)が取られますが、夜間の対応を行っていたのは当直医であったことは、術後の急変に備えた体制をそもそも取っていなかったことを意味します。主治医は、29日午前6時半になってようやく星野さんへの対応を行いますが、この時にはすでに時遅しとなっていました。
 このように、星野さんの死は、手術直後からのショック状態を放置したことが決定的といえます。またそもそも、手術直後の急変に対応できる体制が全く取られていなかったことが原因です。

受刑者の権利と獄中医療の問題
 今後弁護団は、国の主張に全面的な反論を行いますが、星野さんの死の原因が国にあることを明らかにするとともに、患者としての諸権利が受刑者には守られていないことを主張する予定です。この問題は星野さんのケースにとどまらず、獄中では適切な診療・治療がされていないという獄中医療全体の問題を明らかにすることでもあります。
 星野さんの裁判は、12月3日(当方の主張)、年明け2月8日(国からの反論)と続きます。皆様にも法廷へ駆けつけて頂き、獄中医療のあり方を変える裁判にしていきたいと思います。今後ともご支援をよろしくお願いいたします


星野新聞第109号 掲載