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  2012年12月7日 第5回裁判  記事と陳述書


第5回面会・手紙国賠で被告国を徹底追及しました。
 星野文昭さんを守り自由な面会をかちとろう。
 12月7日、面会・手紙国賠の第5回裁判が、東京地裁民事第38部(定塚誠裁判長)で開かれました。この日は、原告である星野暁子さん、金山克巳さんが出廷し、被告国を徹底的に追及しました。終了後、星野再審会議の仲間たちは裁判所前街宣を行って、全証拠開示・再審開始を訴えました。
 今回期日の前に、被告国の代理人は、「準備書面(3)」を提出しました。しかし、その内容は、この間、原告が追及してきた問題にまったく答えていない不誠実なものです。これに対して、西村正治弁護士が、原告「準備書面(4)」を年明けに提出して、徳島刑務所と国の責任を追及することを明らかにしました。証拠として、徳島刑務所が墨塗りした星野暁子さんの手紙の現物を提出しました。
 続いて、金山さんが「陳述書」を読み上げて、徳島刑務所を弾劾しました。
原告が追及してきたのは、まず第1に、星野文昭さんは無期懲役受刑中という困難の中で再審請求を行っているのであり、その訴訟権や外部交通権をどう保証するのかという問題です。これは、本件裁判の核心問題です。
第2は、2・5徳島刑務所デモに対する報復は許されないということです。集会やデモを行うのは労働者民衆の当然の権利であり、憲法でも保証されています。この2・5デモの「首謀者」であるとして、金山さん、仙田哲也さんを「禁止」処分にしたのは、まったく不当です。
 被告「準備書面(3)」は、これらにいっさい答えていません。前回、裁判長が質問した「面会を1ヶ月に2回とする理由」に応えるとして、徳島刑務所は「処遇法」が定めている1ヶ月に2回以上の面会を実施する体制を備えていないことを明らかにしました。その不備を、受刑者や家族、友人に押しつけているのです。
これらを追及する金山さんに対して、定塚裁判長は「内容にわたることは代理人を通して主張するように」と朗読の打ち切りを宣言し、「閉廷」の宣告もせずに法廷から逃げ出しました。こんなことは初めてです。この姿に、傍聴席は怒りの声で満ちました。
裁判終了後、裁判所前でビラをまき、マイクでアピールして、全証拠開示を求める闘いへの賛同を訴えました。最後に、東京高裁に対して、「全証拠を開示しろ。再審を開始しろ」とシュプレヒコールして、この日の闘いを終えました。
 面会・手紙国賠は、星野同志の健康と権利を守る重大な闘いです。裁判に結集して徳島刑務所を弾劾し、自由な面会をかちとろう。




            陳   述   書

  東京地方裁判所民事第38部 御中
                        2012・12・7
                              金山 克巳

[1]はじめに
 本日付けで、被告「準備書面(3)」が提出されました。
 しかし、その内容を検討すると、この間、原告が提起してきた問題にはまったく答えていません。
 被告「準備書面(3)」は、極めて不誠実であり、不当なものです。詳しい反論は、原告「準備書面(4)」において行われると思いますが、本日は、原告としての考えを表明します。

[2]本件訴訟の問題点は何か
前回期日までに原告が主要に追及したのは、以下の2点です。
 まず第1に、星野文昭さんが無期懲役受刑中という困難の中で再審請求を行っていることです。
 これは、本件訴訟の核心問題です。
 星野文昭さんは無実でありながら「殺人罪」で有罪とされ、無期懲役の判決を受けました。それを晴らすために、徳島刑務所から再審を請求しています。逮捕から38年、徳島刑務所に移監されてからでも25年が過ぎています。
 無期懲役受刑者としての想像を絶するような困難の中で、訴訟資料を読み、再審弁護団と討議しながら、ここまで闘って来たのです。家族や支援者も共に闘って来ました。
 しかしながら、被告「準備書面(3)」は、このことにまったく言及していません。
 無実を訴えて再審請求を行っている受刑者の訴訟権や外部交通権をどう保証するのかという視点が、これまでに提出されたどの文書にも示されていません。文字通り、ただ一言の言及もありません。
 ここ数年、無期懲役受刑者という困難を乗り越えて、「足利事件」の菅家利和さん、「布川事件」の桜井昌司さんと杉山卓男さん、「東電女性社員殺人事件」のゴビンダ・プラサド・マイナリさんらが、再審・無罪を勝ち取っています。法務省や刑務所は、この現実をどう考えているのでしょうか。恐ろしさで身が震えないのでしょうか。
 受刑者でありながら再審請求を行っている者の人権や訴訟権は、最大限尊重されなければなりません。
 ところが、法務省や刑務所が実際に行っているのは、まさにその逆です。受刑者の人権や訴訟権を認めるどころか、真っ向からそれを踏みにじっているのが実情です。
 弁護人との接見は、立会い無し、時間制限無し、回数外で保証されなければなりません。再審を支援する者との面会も、広く認めるべきです。
 第2は、2・5徳島刑務所デモに対する報復は許されないことです。
集会・デモを行うことは労働者民衆の当然の権利であって、憲法でも「思想、表現の自由」あるいは「請願権」として保障されています。
 ところが、徳島刑務所は、金山克巳、仙田哲也の2名を、「2・5デモの首謀者」であるとして「禁止処分」にしたのです。「禁止」とは、面会、手紙、差し入れの一切を認めないばかりか、誰かの手紙にその人の名前が書いてあるだけで抹消するものです。これらの措置はまったく不当であり、憲法に反するものです。
原告は前回期日において、被告「準備書面(2)」が、この問題を無視していることを追及しました。裁判長も関心を示しました。
 しかしながら、被告「準備書面(3)」は、この問題を完全に無視しています。

[3]被告「準備書面(3)」の問題点
 被告「準備書面(3)」は、前回期日において裁判長が質問した「2010年9月の時点で面会回数を2回に制限する理由」のみに答えています。
 しかし、その内容は信じられないほど粗雑で、不誠実なものです。
 まず「計算式1」と称して、1カ月の面会総時間を算出しています。
 その内容は、面会室の数×1日の面会時間×1カ月の面会日数(平日数)です。
 次に「計算式2」と称して、受刑者の1カ月あたりの面会可能な総数を算出しています。
 それは、1カ月の面会総時間を受刑者の数と平均面会時間(30分)で割ったものです。
 その結果、導き出される数値は、2005年は1・1回、本件面会不許可があった2010年は、1・4回となっています。これをもって、「1カ月2回」の根拠としています。
 しかし、こんな数字に何の意味があるのか、まったく理解不能です。
 「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(処遇法)」の114条の2項は、1カ月の面会回数が「2回を下回ってはならない」と定めています。ところが、徳島刑務所は法律の求める体制を備えていないと主張するのです。
 法律を実施する体制がないのなら、人員や設備の増強を要求しなければなりません。その努力もなしに、体制の不備を、受刑者と家族、友人にしわ寄せするのが、「準備書面(3)」の本質です。まったく不当です。
 しかも、「準備書面(3)」を読むと、刑務所の職員は増加し、受刑者は減少していることが分かります。
 「処遇法」が施行された2006年の受刑者数は1043人、職員数は192人です。翌年は、受刑者数900人、職員数193人です。ところが、本件面会不許可があった2010年には受刑者が786人、職員数は212人となっています。
 逆に、面会総数は、2006年の3703件、翌年の5292件から、2010年には2536件、その翌年には2062件に激減しています。
 さらに乙18号証によれば、2006年の面会申込件数は3692件、翌年の5324件から、2010年には2707件、2011年には2092件に減少しています。面会不許可によって、申込そのものをあきらめた人が多数いることが分かります。痛ましい数字ではありませんか。
 これこそが、徳島刑務所がめざしたものに他なりません。
被告「答弁書」や同「準備書面(1)」があげている「暴力団の不正面会」うんぬんが、面会件数削減の口実に過ぎないことは明らかです。
 2007年には5292件の面会が平穏に実施されていました。やればできるのです。2008年以降、これを無理矢理削減する方針が実施されたのです。それは徳島刑務所だけではありません。全国の刑務所で一斉に行われました。
 その不当性が、被告「準備書面(3)」によって、改めて明白になったのです。

〔4〕むすび
 徳島刑務所による本件面会不許可は、無期懲役受刑という困難の中で再審を請求した星野文昭さんと星野暁子さん、さらには友人、支援者の人権を著しく侵害するものです。
 事実調べを行った上、速やかに賠償命令を出すことを求めます。
                                                                        以上