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  月形刑務所で獄中死した伊藤耕さん国賠                         

国が非を認め、ほぼ全額賠償勝ち取る



                               埼玉星野ネットワーク 皆川  学



伊藤耕さんオフィシャルサイトより
 朗報である。伝説的ロックミュージシャン・伊藤耕さんが月形刑務所(北海道)で獄中死したため遺族が国に損害賠償を求めていた訴訟で、2月7日、東京地裁で和解が成立し、国側は請求額のほぼ満額4300万円を支払うこととなった。
 伊藤耕さんは服役中であった2017年10月15日、腹痛を訴えて月形町立病院に搬送されたが「胃ケイレン」と診断されて刑務所に戻され、その後居房で何度も苦しんでいたが、刑務所は8時間以上も放置、耕さんは17日未明に絶命した。出所まであと1カ月のことであった。
 死因は「肝細胞癌破裂による出血性ショック死」とされたが、不審に思った妻・満寿子さんが協力してくれる解剖医を捜し、1カ月後に北海道大学死因究明センターが解剖したところ、死因は「絞扼性イレウス(腸閉塞)」と判明した。腸閉塞ならすぐ病院で処置すれば死には至らなかったであろう。
 訴訟で国側は「解剖から一カ月近い時間が経っていたので、本人かどうかは分からない」などと難癖をつけた。しかし耕さんの居房に付いていたビデオカメラの映像を、原告側と裁判官が見ることができ、「居房で苦しみながら何度も転倒する耕さんの姿が写っていたことが決め手」となって(弁護士ドットコムより)、裁判官は「口外禁止」を条件とした和解を提案してきた。
 しかし満寿子さんは「耕の受けた不条理な現実を多くの人に知ってほしくて提訴したのだから」として、その条件を拒否。その結果裁判所は、その条件を外してほぼ全額の賠償を認めることとなった。国からの「謝罪」の文言こそないが、「ほぼ全額賠償」とは、国側が非を認めた形になっているので、「全面勝訴」と言っていいと思う。
 入管・刑務所施設の劣悪な医療体制に一矢を報いた結果となった伊藤国賠は、私たちの星野国賠の4カ月前に始まった。伊藤国賠に続き、星野国賠も法務省を追撃しよう。



新聞第137号 掲載