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東京・なかのZEROで講演集会
 4月25日、東京中野の「なかのZE RO視聴覚ホール」で桜井昌司さん(布川事件元再審請求人)と土田元哉弁護士(星野国賠訴訟原告代理人)をお招きして講演集会が行われた。 この集会は、星野さんをとり戻そう東京連絡会と一般合同労組東京西部ユニオンの共催で行われ、65人が参加した。
 桜井さんは、でっち上げを打ち砕いたのは、警察や検察のウソを暴いたこと、権力に対し顔を真っ赤にして怒ったことだと熱く語った。
 土田弁護士は、徳島刑務所ががんの治療と告知を放棄、及び東日本成人矯正医療センターが術後出血を放置した違法があると弾劾し、医師意見書の重要性を明らかにした。(講演要旨 文責は編集部)
警察や検察は平気で嘘をつく
                 布川事件・元再審請求人 桜井昌司さん

 初めて星野文昭さんを知ったのは、星野さんのお母さんの体調が悪いから、執行停止にして会わせろという要求を裁判所前でやっている時です。私の母も昭和51年に子宮がんになって、最高裁に会わせてくれと言ったのですが会わせなかったです。おふくろの死に目に会わせない裁判所はだめだなと思いました。それで 星野さんの運動に関わったということです。
 星野さんは仮釈放も許されなかったですね。これは国家の意志、検察庁の意志です。星野さんは国家に逆らった人間で警察官を殺したとんでもないやつというのが検察庁の考え方ですよね。だから、そういう中で殺されました。星野さんは冤罪じゃないですか。警察も検察もわかっているでしょ。はっきり背広も違うんだから。
 どのような思想であれ、宗教であれ、人の命を大事にできない国家というのは人間としてその人が生き得るべきものを守れない社会であったら、そんなのは価値がないという確信がありますね。 なんで日本がこんな国家なのか。自分たちが正義だと決めたら平然と嘘を語る警察や検察がまるで正義の味方であちこち顔を出しているからです。しかし検察庁なんてとんでもない。腐ってますよ。布川事件や袴田事件など、多くの冤罪事件で行っていることを見れば明らかです。

 警察のウソを暴いた布川再審
 なぜ布川事件が勝てたのかというと、警察・検察の嘘を暴いたからです。私と杉山は録音テープ、自白テープを2回作らされました。11月6日の録音テープが裁判所に提出され、こんなふうにすらすら自白できるのは犯人の証拠だとされました。ところが第二次再審請求の2001年になって、録音テープがもう一本あるから出せと追及したら、検事が出してきました。その日付が10月17日付けになっていて、確かにべらべらしゃべっているが、自分が聞いたら記憶と違う。中味が違う。自宅に持ち帰って聞いたら、17分か19分足りない。テレビ朝日の人に見てもらったら雑音が入ったり、切った後があると、それで改ざんされたことがわかりました。
 さらに、事件現場に指紋は43個あって、5個が銀行員のものと被害者のもので、38個は対照不能。真犯人のものがあったと思います。私と杉山の指紋は出てきませんでした。被害者宅へ行っていないのですから当たり前です。ところが裁判所は、「指紋がないからといって、犯人でないとは言えない」と言って有罪にしました。あきれはててしまいます。
 現場には毛髪8本がありました。私たちは警察で髪の毛を取られたことがあったので、第二次再審請求になって毛髪鑑定書があるはずだから出せと言ったら、出てきました。桜井昌司、杉山卓男の毛髪とは形状が違うという鑑定でした。こんな無実を証明している証拠が再審で初めて出されたのです。
 さらに、事件発覚直後の昭和42年8月30日に、事件の夜、「犯人らしき人を見ました」と自分で申し立てに行っている人がいる。被害者に自宅のふすまの開け閉めが悪いので修理を頼もうとして行こうとしたら、門のところに一人が立っていた。人がいるのでそのまま素通りした、というのです。この人の調書がいまだに出て来ない。
 この目撃者が被害者宅の前を通った時刻は、その後に尋ねた家での時間からどんなに遅くても午後7時16分ころです。我々の嘘の自白では、その日、7時6分着布佐駅(成田線)の電車で現場の家に行ったことになっています。
 布佐駅からまっすぐ被害者の家まで18分かかる。だから、われわれがどんなに急いでも7時24分にしか着かない。事件現場の前で目撃者が見たのはわれわれじゃないことは明白です。だから、この調書を隠した。今でも隠したままです。
 警察・検察は無実の証拠を隠すし、平気で嘘をつきます。この調書を出せと国賠裁判を始め、勝利しました。私は、警察・検察が証拠隠しをしたら犯罪となるような法律を作りたい。そうなると布川事件の真実はもっと明らかになります。

 受刑者を人間とみない刑務所
 私は29年刑務所にいたので、刑務所医療がどんなものかわかります。薬はどんどん与える。製薬会社の利権ですね。当時は八王子医療刑務所に行きましたが、薬はどんどん出す。あそこへいくとあぶないよなと、八王子へ行った仲間が言っていました。必要のない手術をされる。刑務所の医療は、そもそも医者はいない。看護師の資格を持った刑務官が週に2回ほど回ってどんな状態かを聞くだけ。歯が痛くなったら、根治水というかヨードチンキをつける。抜歯するのに半年も一年もかかる。何でこうなるのかというと、刑務所にいる人間は人間とみていないからなんですよ。人を罪に陥れて裁く検察官に刑務所の管轄をやらしていてはだめなんだ。
 私は星野さんと同じ年です。星野さんが刑務所ですごした人格的な部分を思うと本当に一度会ってみたいなと心から思う。社会でこそ、あの人に行動をさせてみたかった、それが本当に残念でならない。
 本当に命が大事。自分自身が大事なように他の人の命も大事という思いで、冤罪者を救うために、冤罪をなくすために命の限り頑張っていきたいと思います。こんな理不尽に肝臓がんをほっといたことを許していいのかと。道理の言葉をもって、説得しましょうよ。必ず勝てますから。そして星野さんの無念を晴らしてあげてください。

星野新聞第127号 掲載