左から和久田修弁護士、岩井信弁護士、藤田城治弁護士、土田元哉弁護士 |
岩井信弁護士 国の主張の大きな特徴は①事実の隠蔽、②事実の矮小化、③事実の無視、この三つだと思います。そうした中で、国は二つの「仕方がなかった」論で正当化をしています。一つが刑務所だから、やれるだけのことはやった。刑務所だから仕方なかったという主張です。もう一つは、星野さんは公安関係者だからこれで良かったという、極めて恐るべき主張がその背後にあると思います。
証拠の「診療情報提供書」や「公安関係受刑者の護送について」を見て、徳島刑務所は巨大な腫瘤(しゅりゅう)を発見してなぜ放置したのか、医療センターは真夜中、5、6時間もなぜ医療関係者の見回りをしなかったのか、このなぜを解く鍵の一つに「公安関係受刑者」という当局の認識があると思います。
国は星野さんの命と情報を支配して、それを放置した。そうしたことをこの国賠訴訟の中で明らかにしていきたいと思っています。
藤田城治弁護士 今回の肝臓切除手術の成功率で参考になるのが、同じく肝臓を切る生体肝移植です。生体肝移植で、提供側の死亡例は6000件に対して1件です。星野さんの肝臓はがんには犯されていましたが、それ以外の部分は非常に良かった。だから、今回の手術の成功率は生体肝移植の手術との比較で論ずるべきです。
生体肝移植では、肝臓を切除すると、15%の方は腹腔内で再出血し、更にその25%は止血のために再開腹をしています。ここまでやって初めて、高い成功率が維持されている訳です。
ところが医療センターは、集中治療室(ICU)の基準を満たさない回復室に星野さんを入れ、手術後、執刀医を呼び出すオンコール体制すらありませんでした。この裁判では、医療センターはとても手術できる施設ではなかったということを明らかにしていきたいと思います。
土田元哉弁護士
星野さんの死は、被告・国の姿勢そのものから、獄死攻撃と思わざるを得ません。星野さんは術後出血で血圧が下がり、ショック状態に陥っていました。私たちはショック状態に陥っている星野さんを放置して死なせた責任を追及しています。星野さんは術後の18時50分に高い方の血圧が64まで下がり、夜の23時までに90を超えることなく一貫して低い状態が続いていました。これは一般的にショック状態の判断基準にまさしく当てはまるものでした。ところが国は、血圧は60とかに一旦下がったけども、循環は一定程度維持されていたと、ショック状態を否定しています。
その上で、「ショック状態が起きた段階では、適切な医療措置を講じても手遅れだった。注意義務違反と死の結果に因果関係がないから責任はない」と主張してくる可能性があります。こういう逃げを許さず、最後まで追及していきます。
和久田修弁護士 星野さんは、もし命があればこの壇上に立っていたかも知れない。そう思うと、本当に悔しさと怒りがこみ上げてきます。星野さんは生前、すべての人が人間らしく生きられなければ自分も人間らしく生きられないと、ずっとそのことを言ってきました。
その星野さんが、一番人間らしくない処遇を受けて殺された。この事実がコロナ禍の中で日本全体に顕在化している。昔からそういうことが日本にはあった。そのことを考えれば、星野さんの国賠、そして再審にきちんと勝利することが、星野さんが言っていた、すべての人が人間らしく生きられる社会への、小さいかも知れませんけど、大きな
第一歩だと思います。皆さんと共にこれからも頑張っていきたいと思います。
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星野新聞第116号 掲載
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