TOPページへ !
71年11・14沖縄闘争50年
11・28全国集会の発言(要旨)
弁護士からの報告
 星野国賠訴訟代理人 岩井信弁護士
 医療センター(医療刑務所)のカルテに医師と星野さんとの会話があります。医師が手術しかないと説明する中で、「脇腹にどーんと衝撃が加わったり、そうでなくても自然に破裂する可能性もある」と述べると、星野さんは「だいたいどのくらいでこの状態になったのでしょう」と質問しています。しかし、医師はのらりくらりと答えませんでした。
 まさに、この「なぜ」という星野さんの問いを解明するのが国賠訴訟です。請求内容は星野さんの命を奪ったことの責任追及と、仮釈放審理をしていた更生保護委員会や星野さん自身に、重大な病気について報告しなかったことの責任追及です。通常、こうした事件を医療過誤訴訟と言います。しかし、本件は「過誤」ではなく、意図的な「故意」による医療「放置」事件です。
 3月1日のエコー検査で大きな腫瘤(しゅりゅう)を発見し、「CT検査必須」とカルテにもあるのに医療センターに行くまで何も診断も治療もしませんでした。外部病院宛の3月13日付診療情報提供書が証拠で提出されましたが、実際には出していない疑いが強くなっています。
 医療センターも、止血のため再開腹の手術をすべき時期を逃して放置しています。放置を「保存的治療」として、言葉の言い換えでごまかそうとしています。
 こうしたごまかしを3人の医師の意見書を提出してあばき、真実を明らかにしていきます。
  大坂裁判弁護人 山本志都弁護士
 私は、奥深山幸男さんの弁護人であり大坂正明さんの弁護人でもあります。
 50年前の事件を裁くという前代未聞の裁判です。しかも、被告人が事件に関与したという客観的証拠は全くなく、被告人と犯罪事実を結びつける証拠は、共犯者とされる人たちの供述調書しかない、という証拠構造です。その場合、供述した人たちを呼んで裁判所で話を聞くというのが刑事裁判の原則ですが、亡くなった人も多く、記憶も失われています。そうなると、結局捜査段階の供述調書に戻ってしまうことになる。
 時効制度の趣旨として、「証拠の散逸」があります。本件では実際にそれが起きています。関係者の別の裁判で使われて保存期間が過ぎて廃棄されてしまったというものです。
 殺人事件は問答無用に裁判員裁判となります。共同被告とされている奥深山さんが病気になり、裁判所は1981年に公判手続停止と決定しました。94年に公訴棄却・免訴を申し立てましたが、裁判所はそれを放置しました。15年間裁判が開かれなかったら免訴、17年間公判手続が停止したら公訴棄却という最高裁の判断もあります。
 検察官とは別に、弁護団は11月12日、裁判員制度除外請求を出しました。憲法違反とも申し立てました。除外申請は年度内の判断でしょう。裁判も来年になると本格的に動き出します。
           刑務所医療を告発する
 
船橋二和病院医師 柳澤裕子さん
 星野文昭さんの14㌢の巨大肝がんは、とても特殊なタイプでした。肝がん以外の肝臓は正常なので手術はできました。
 手術中に大出血がおき、人間の総血液量を超える輸血と輸液をしてどうにか手術を終えました。
 問題は術後です。18時50分に血圧が上64、下40台で、64というのはショック状態です。ショックというのは医学用語で、血圧が下がって各臓器に還流する血液が減った結果、多臓器不全になることを言います。放っておけば死にます。担当医は原因を究明せずに、輸血・輸液をするだけ。
 23時にはアシドーシスでした。体の酸性アルカリ性が酸性に傾いていることで、細胞が死に始めていると考えるべき状況でした。それでもアルカリ性の輸液をするだけで原因追及はしませんでした。当然星野さんは亡くなるしかありません。
 東日本成人嬌正医療センターは「病理解剖をやっていません」と言って、行いませんでした。病理解剖ができない所で14㌢の肝がんの手術をする資格はないと思います。
 そうなると徳島刑務所がやったことは絶対に許せません。本人に巨大な肝がんがあることを隠しただけでなく、仮釈放の審理にも、そのことを伝えなかった。仮釈放されていれば、星野さんは医療センターで手術を受けなかったでしょう。
 意見書を書いてきて、最後に到達した結論は、刑務所における医療は医療ではないということです。刑務所医療は救命に関心がないのです。入管施設がウィシュマさんを殺したのも同じです。普通の医師がとる行動をとらない。
 星野さんの人生を考えると無念です。星野さんは自分の死を通して、刑務所医療を変えてくれ、そしてこの国の人権状況を変えてくれという檄を私たちに飛ばしていると思います。星野さんの実現したかった社会を、皆さんと一緒に実現していけるように頑張っていきたいと思います。
           要望書集め国賠勝利へ
 
星野国賠に勝利する全国運動 金元重さん
 星野国賠闘争は、星野さん無念の獄死の真相を明らかにし、徳島刑務所と東日本成人矯正医療センターが獄中医療の義務を放棄した責任を取らせる闘いです。
 今年5月30日、星野国賠全国運動呼びかけ人第一回会議が開かれました。星野闘争の蓄積と経験の上に、さらに広範な社会的な支持・支援を広げるため、入管施設の人権蹂躙(じゅうりん)、冤罪と闘う人々、労働運動弾圧と闘う仲間たちと連帯して闘うことが必要だと話し合いました。
 10月1日、星野国賠全国運動呼びかけ人会議が開かれ、国賠全国運動として今すぐにでもとり組むべき課題を明確にしました。
 星野国賠の意義を社会に広く知らせ、裁判所に広範な労働者市民の声を要望書の形で届ける取り組みを進めていきましょう。
 要望書と共に医師の意見書作成費用のカンパ活動にも取り組んで下さい。
 沖縄人民と真に連帯
 東京東部星野さんを取り戻す会 小泉純子さん

 2年前の5月30日、星野文昭さんが国家権力によって虐殺ともいえる獄死攻撃を受け命を奪われたことに心からの怒りを覚えます。
 沖縄のゼネスト、渋谷闘争から50年を経て、今なお沖縄では苦闘を強いられています。それでも粘り強く毎日闘い続けています。沖縄人民と真に連帯する闘いとして星野文昭さん救援の闘いがあったし、これからもそうだと思います。
 星野さんの国賠・再審闘争の発展と勝利、大坂さん裁判闘争の勝利に向けた闘いは、これまで権力と命をかけて闘い抜いてきた戦前の治安維持法下の労働者人民の闘いを復権させる闘いでもあると思います。

 沖縄からの報告
 沖縄万人の力で星野さんを取り戻す会 和田邦子さん

 沖縄の新聞は、辺野古埋め立てのはるか前から政府が軟弱地盤があることを知っていたと伝えています。辺野古には軟弱地盤だけではなく活断層も、高さ制限の問題もあります。
 11月9日から30日まで自衛隊統合演習があり、日米の軍事一体化、沖縄の戦場化が進んでいます。
 各地で闘いが起きています。八重岳では20人ぐらいが座り込んで演習をストップさせました。ゲート前座り込みに参加し、赤嶺全学連委員長と学友が発言しました。沖縄で反対闘争をしていく中で、こういう国のあり方を変えていかなければと強く思いました。


 須賀さんを取り戻そう
 迎賓館・横田爆取デッチあげ裁判元被告人 板垣宏さん

 須賀武敏さんは、無実でありながら、8年3カ月の刑を強いられ、後4年半を残し横浜刑務所に収監中です。劣悪な処遇によって、腰・背中の疾患及び心臓病等が悪化し、命と健康が危険にさらされています。
 26日、須賀さんの家族を先頭に、40人で刑務所への申し入れを行いました。この日をもって新たな闘いを開始しました。いかに困難であろうとも刑の執行停止を勝ち取り、外部の信頼できる医師と病院での治療が緊急かつ絶対に必要です。
 そのための強力な運動を全国的に展開していきたいと思います。皆さんのご支援をお願いします。

 巨大な反戦政治闘争を
 東京労組交流センター 山口弘宣さん

 本日午前中、大坂救援会と共に東京拘置所包囲デモを貫徹しました。
 50年前の沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒の巨大な闘いを、今再びこの時代の中でつくっていくことが、労組交流センターの責務だと思っています。
 私は日本機械の労働組合の委員長をしています。1969年10・21には、青年労働者が30人の部隊を作って闘った。青年部役員が逮捕され、機動隊が独身寮に入ってきて弾圧されたが、労働組合が守りぬいた。
 巨大な政治闘争を作り上げ、大坂さんを奪還し、星野闘争を勝利させていく。職場に労働組合をつくり、日帝を打倒しよう。

  地域に救援会結成を
 大阪・星野さんをとり戻す会 吾郷春代さん
 大阪とり戻す会では、地域「星野」の結成に向かって闘っています。青年労働者が「星野闘争を闘いたい」と言って進めてきました。6月27日には関西星野集会の場で「大阪・北摂」と「大阪市とり戻す会」を結成し、1月には「奈良とり戻す会」が誕生します。
 北摂地域の高槻医療福祉労働組合は「労働組合が沖縄闘争や改憲・戦争反対の闘いを闘おう」と運動方針に書き、「星野」の会員でもあります。そこで絵画展を行い、多くの組合員が参加しました。関西生コンの地域ブロックの労働者と共同の闘いも行っていて、星野闘争が団結の柱になっています。



 裁判勝利、大坂さん奪還
 大坂正明さん救援会 小泉義秀さん

 午前中の東拘包囲デモに大坂正明さんと幼稚園時代の同級生だった坂野康男さんが駆けつけ、大坂さんに声を届けました。救援会は獄中の大坂さんと団結し、闘い抜いてきました。
 今、検察官が「来年度前半には判決を出せ」と言っています。裁判員裁判を強行し、拙速裁判で有罪にしようとしています。11月14日の毎日新聞の特集記事は、それを想定した世論操作です。
 大坂さん奪還のためには裁判で勝たなければなりません。奥深山さんの裁判を大坂さんの裁判の中でもう一回明らかにして、星野・奥深山・大坂一体の闘いで大坂さんを奪還しよう。


 反弾圧闘争の重要性
 婦人民主クラブ全国協議会 鶴田ひさ子さん

 星野さんの生き方、獄中44年の闘い、大坂さんが指名手配攻撃を受けても46年間闘い抜き、更に獄中で4年半、奥深山さんの闘い、こうしたことに多くの労働者・市民はすごい衝撃を受けています。反弾圧闘争というのは、改憲・戦争阻止の核心だと思います。
 星野さんの絵画の常設展をしている婦民の事務所は相模補給廠の真ん前にあります。今ここが米軍のミサイルの発射司令部になっています。沖縄南西諸島や沖縄本島のミサイル基地へ発射指令を出すことを考えると身体が震えます。
 オスプレイ反対闘争や全国の反基地闘争の先頭に立って、頑張っていきます。


 11・14闘ら争を甦せよう
 全学連委員長 赤嶺知晃さん

 全学連は11月10日、1971年11・10沖縄ゼネストの闘いを甦らせよう、戦争を止めよう、基地をなくそうと訴えて那覇の国際通りデモと集会を行いました。翌日、辺野古現地での座り込みに決起し、その後は陸上自衛隊の勝連基地にミサイル配備反対の申し入れ行動を行いました。デモに先立ち、沖縄大学で当局・警察の弾圧に抗して、処分撤回集会を打ち抜きました。京都大学では処分撤回を全国学生の総決起で闘います。
 全国の学生と団結して、本土と沖縄の分断を打ち破り、星野さん、大坂さん、奥深山さんら先輩の闘いを引き継ぎ全力で闘います。
           怒り広げ改憲・戦争阻止
 
改憲・戦争阻止!大行進 高山俊吉弁護士
 柳澤医師の報告、言葉を失う。命を守ることが医師の責任なら、その任務を放棄したところに、刑務所の医師はいる。医師までがそうであるならば、刑務所の中の人権というものは、根底から崩壊していることが強く推定される。
 こんな社会は基本的に根底的におかしい。国家権力が攻撃をしかけられたとみなした時には、権力は想像をはるかに越えた極みの反撃に及ぶ。殺害の反撃までも敢行する。これが権力だということがわかった。私たちはこの社会を変えよう。人間が生きることに喜びを見いだせる、そういう社会をつくろう。
 沖縄の闘いとこの国家権力の在り方とは、実はひとつの問題の表と裏だと思う。今、沖縄はこの国が中国に対して、また世界の各国に対して戦争を仕掛けようとしていることを、象徴的にそして現実的に示すものとしてある。私たちは、そのことを今から50年前にすでに経験している。学生を中心とする大きな闘いが沖縄で組まれ、東京でも組まれた。このことに対する権力の大きな反撃があった。そして今私たちは、これを打ち返すことによって、勝利を勝ちとろうとしている。私たちには確実に勝利の展望があることを、この流れの中から感じる。
 私たちは全国各地に、大坂さんが受けている攻撃と、星野さん、奥深山さんが受けた攻撃をしっかりと伝えていこう。そのことは確実に闘う仲間を増やす。
 私たちの怒りを全国に燎原(りょうげん)の火のように広げよう。今こそ怒りをもって立ち上がろう。

星野新聞第122号 掲載