星野国賠訴訟代理人 岩井信弁護士 医療センター(医療刑務所)のカルテに医師と星野さんとの会話があります。医師が手術しかないと説明する中で、「脇腹にどーんと衝撃が加わったり、そうでなくても自然に破裂する可能性もある」と述べると、星野さんは「だいたいどのくらいでこの状態になったのでしょう」と質問しています。しかし、医師はのらりくらりと答えませんでした。
まさに、この「なぜ」という星野さんの問いを解明するのが国賠訴訟です。請求内容は星野さんの命を奪ったことの責任追及と、仮釈放審理をしていた更生保護委員会や星野さん自身に、重大な病気について報告しなかったことの責任追及です。通常、こうした事件を医療過誤訴訟と言います。しかし、本件は「過誤」ではなく、意図的な「故意」による医療「放置」事件です。
3月1日のエコー検査で大きな腫瘤(しゅりゅう)を発見し、「CT検査必須」とカルテにもあるのに医療センターに行くまで何も診断も治療もしませんでした。外部病院宛の3月13日付診療情報提供書が証拠で提出されましたが、実際には出していない疑いが強くなっています。
医療センターも、止血のため再開腹の手術をすべき時期を逃して放置しています。放置を「保存的治療」として、言葉の言い換えでごまかそうとしています。
こうしたごまかしを3人の医師の意見書を提出してあばき、真実を明らかにしていきます。
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大坂裁判弁護人 山本志都弁護士 私は、奥深山幸男さんの弁護人であり大坂正明さんの弁護人でもあります。
50年前の事件を裁くという前代未聞の裁判です。しかも、被告人が事件に関与したという客観的証拠は全くなく、被告人と犯罪事実を結びつける証拠は、共犯者とされる人たちの供述調書しかない、という証拠構造です。その場合、供述した人たちを呼んで裁判所で話を聞くというのが刑事裁判の原則ですが、亡くなった人も多く、記憶も失われています。そうなると、結局捜査段階の供述調書に戻ってしまうことになる。
時効制度の趣旨として、「証拠の散逸」があります。本件では実際にそれが起きています。関係者の別の裁判で使われて保存期間が過ぎて廃棄されてしまったというものです。
殺人事件は問答無用に裁判員裁判となります。共同被告とされている奥深山さんが病気になり、裁判所は1981年に公判手続停止と決定しました。94年に公訴棄却・免訴を申し立てましたが、裁判所はそれを放置しました。15年間裁判が開かれなかったら免訴、17年間公判手続が停止したら公訴棄却という最高裁の判断もあります。
検察官とは別に、弁護団は11月12日、裁判員制度除外請求を出しました。憲法違反とも申し立てました。除外申請は年度内の判断でしょう。裁判も来年になると本格的に動き出します。 |