今日の絵画展のチラシに載せられている少女の眼が非常に印象的です。この少女を見ると、星野文昭さんに見られているという気持ちになります。
2019年5月28日、星野さんは東京都昭島市にある東日本成人矯正医療センターで肝臓ガン切除の手術を受け、その2日後に亡くなりました。当直医が書いた死亡診断書には「巨大な腫瘍」とあります。腫瘍は14×11㌢で、「こんなに大きくなるまで放っておいて」という医療センター側の徳島刑務所に対する気持ちが込められていような気がします。
私たちは、7月29日と9月6日の2回医療センターで、10月18日に徳島刑務所で、カルテ等の証拠保全を行いました。証拠保全を通して確保した資料によって、3つの問題があることが分かって来ました。
その第1は医療放置です。2018年8月22日に星野さんは倒れました。それまで57㌔程度あった体重が次第に減少し、今年になると51㌔まで減りました。刑務所はその年の秋には胃腸に異常があるのではないかと疑って内視鏡などの検査をしましたが、原因はわかりませんでした。その後、家族や弁護団が求めた精密検査はせず、放置しました。
仮釈放妨害のため星野さんにも隠す 第2は医療隠蔽(いんぺい)です。2019年3月1日、2月の血液検査でガンの疑いが出たことから徳島刑務所はエコー検査をしました。カルテには「肝内腫瘤(しゅりゅう)」を認めたとあります。その日にガンが発見されたのです。しかしこの結果は、星野さん本人には1ヶ月半以上、伝えられませんでした。星野さんが肝臓にガンがあると聞いたのは、4月18日に医療センターに移されてからです。
徳島刑務所が医療センターに相談した文書が出てきました。「医療的には明らかに精査と治療が必要なケースと考えているものの、対応に非常に苦慮しております」。苦慮とは何でしょうか。単に精査と治療が必要なら、苦慮する必要はありません。治療すれば済むことです。しかし刑務所はガンが発見されてからも、精査も治療もしなかったのです。そもそも、なぜもっと早くエコー検査をしなかったのか。ガン発見に直結する血液検査をしなかったのか。
その時、四国地方更生保護委員会は星野さんの仮釈放を許可するかどうかの審理を行っていました。その審理にあたっては「心身の状況」を検討することが定められ、刑務所長はそれを通知することを義務づけられています。にもかかわらず、徳島刑務所で保全した資料には、通知したことを示すものがありませんでした。係官に聞くと「ありません」と言いました。星野さんの病状を知らせると、仮釈放許可に向かうかもしれないと考えて隠蔽した疑いを持っています。
第3は医療過誤です。肝臓ガンの手術による出血量は4300㍉㍑に達しました。これほどの大出血をしたのに術後、星野さんは「回復室」という部屋で、手術が終わった午後5時から翌日の午前5時まで事実上放置されていました。ICU(集中治療室)で医師や看護師が付き添う体制はありませんでした。ならば、そんな所でこれほどの大手術を行っていいいのかという疑問が出てきます。
星野さんが実際に置かれた状況を見ると、国家犯罪と言うしかないと思います。最初に言った通り、私は星野さんにじっと見られており、その目に向き合う覚悟で、国家賠償請求訴訟に取り組んで行きます。星野暁子さんと兄弟を請求人とする第3次再審にも取り組みます。共に進んで行きましょう。
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星野新聞第91号 掲載
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