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講 演
戦争政策に徹底的な反対を
弁護士 高山俊吉さん
弁護士。憲法と人権の日弁連をめざす会前代表。「司法改革」攻撃、裁判員制度に反対して闘う

 6月22日、「星野さんを取り戻そう!杉並・高井戸の会」は、結成1周年集会とミニ絵画展を開催しました。星野文昭さんを獄死で失った悔しさや悲しみ、怒りを行動に変え、星野闘争のさらなる発展をかち取ろうと45人の人たちが高井戸地域区民センターに集まりました。集会で高山俊吉弁護士が「憲法と人権」をテーマに講演しました。講演内容の一部を要約して紹介します。(編集部)

 
 憲法は31条から40条まで刑事基本権に関する規定が盛り込まれています。人権規定がこんなに多い憲法は世界でもめずらしいと言われています。しかし現実の運用はどうか。「国家の暴力装置性」が言われます。星野文昭さんに対する信じがたい暴挙で、国家はまさに暴力装置であること、国は人民の殺害も全くいとわない犯罪者であることを改めて強く感じます。

 戦争の時代

 「憲法と人権」という演題は、現在の政治状況に即して言えば「改憲と戦争の阻止」です。すべての議論は、私達が生きている時代を正しく捉えることから始めねばならない。彼らは必ず「戦争は起こらない」と言いながら戦争を起こし、戦争が起きれば国を守ろうと国民をそそのかす。その欺瞞(ぎまん)を暴いて時代を根底から捉える必要があります。
 昨年2月、世界経済のリーダーの地位から転げ落ちまいとして「ファースト」にしがみつく米政府は、戦争政策(NPR)の見直しを公表しました。使いやすい小型核兵器を用いた核戦争を始めると言う訳です。米国は中国を最大敵とする経済=軍事争闘戦にすでに入っています。
 安倍政権は戦後最大の経済危機を背景に戦後最大の軍拡路線にひた走っています。事実上の空母保有を決め、大量のF35をアメリカから買う約束をした。そして沖縄辺野古の土砂投入、入管法改悪、消費税引き上げ、年金破綻隠し、共謀罪などなど。
 しかし他方、秋田や山口ではイージスアショアで安倍戦争政策にノーが突きつけられました。「この国の安全を守ることの大切さ」というドグマのウソを、なんと安倍首相の地元と菅官房長官の出身地の住民が気づき始めた。彼らは今まさに打ちのめされている。
 安倍もトランプも破綻と絶望の極致にあります。しかしそれ故に戦争に突き進むしかない。その認識をすべての議論の出発点にしよう。話を単なる戦争反対に抽象化させたり、自衛戦争は許されるなどと相対化させてはなりません。そういう議論はひと風吹けば吹っ飛んで戦争が始まり、そういう人たちは戦争政策に翼賛します。星野さんへの攻撃を正しく理解する上でも、この時代が下手人だという理解が欠かせません。

 安倍の改憲政策

 国会では安倍の改憲は遠のいたという議論が生まれています。しかしそれはウソです。参院選前の国会発議策謀は破綻しましたが、安倍は2020年を改正憲法施行の年にする方針を変えていません。5月13日の党役員会では、改憲論議の是非を参院選の争点に据えるように指示しました。
 自民党の9条改憲案は、1項と2項は残して9条の2を付け加えようというもので、戦争を可能にするために戦争放棄条項を崩壊させ全否定させようとするものです。「陸海空軍を持ってはならず、他国と戦火を交えることも認めない」ことと「自衛隊を持つ」ことは絶対に両立しません。
 憲法とは何か。憲法理念は歴史を越えた天賦永遠の原理のように言われますが、違います。すべてこの世の人間が作ったもので、簡単に言えば時代を背景にした社会的な産物です。権力を獲得した新勢力が旧勢力を打ち倒した理念を明確にし、反逆を許さないことを様々の美称を用いてうたい上げた宣言です。
 日本国憲法は、戦後革命の結論としての妥協の産物として生まれました。戦争放棄を宣言し、民主主義と基本的人権を強調しながら、象徴天皇制と私有財産制を標榜(ひょうぼう)しました。

 私達がとるべき姿勢

 すべての闘いをこの国の戦争政策への徹底的な反対・対決との関係で捉えたい。さらに、私達の反戦の闘いは全世界の労働者市民と手をつなぐことでひとつになります。この関係への深い信頼を持ちたい。
 そして、戦争の危機と闘うことは新しい地平・世界を生み出すことを意味し、改憲阻止の闘いはその中軸を構成します。星野さんが命をかけて私達に訴えたのはそういうことだったのではないでしょうか。

   星野新聞第80号 掲載
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