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徳島刑務所の責任追及へ
弁護団が証拠保全を申し立て
再審弁護人 藤田城治さん
徳島刑務所、東日本成人矯正医療センターは星野文昭さんに獄死を強いました。この責任を徹底的に追求しましょう。その闘いの第1弾として、弁護団は東京地裁立川支部に証拠保全を申し立てました。弁護団からの報告です。
 
 星野再審弁護団は星野さんの死の責任を追及するため、6月21日、東京地方裁判所立川支部に証拠保全の申立をした。徳島刑務所と東日本成人矯正医療センターの責任を明確にするため、カルテなど医療記録、切除したがんの標本、星野さんが徳島刑務所に提出した願箋(がんせん)などの開示を求めるためである。
 認められれば、裁判官とともに資料が保管されている矯正医療センターに赴き、カルテなどの開示を求めて記載内容を確認することになる。刑務所という密室で、星野さんのがんの進行を放置した行為の経過が明らかになるはずである。
 民間の医療機関であれば、患者や遺族が要求すれば、簡単にカルテなどの医療記録は開示される。しかし、刑務所での医療記録は、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」により、非開示とされている。
 裁判例には、自身が東京拘置所で受けた医療についての情報開示を求めたところ、「受刑者のプライバシーを保護するため非開示は正当」と判断したものがある。自分の医療情報であるのに、「プライバシー保護」を理由に非開示とするのは、明らかに倒錯した論理であるが、証拠保全手続であれば、この点をクリアすることも可能である。
 もう一つ、証拠保全を求める理由は、刑務所当局による「改ざんの恐れ」が高いからである。府中刑務所で受刑者が刑務官から暴行を受けた事件でも証拠保全が実施された。そこでは、カルテに相当する医療記録に、「紙厚が極端に薄くなっている」「直線的に紙が断裂している」「罫線が消えているにもかかわらず、罫線上の字が明記されている」と極めて当局により改ざんがなされた可能性が高いことが確認された。

  
別の受刑者もがんを放置されて死亡

 おりしも2019年6月14日、徳島刑務所での受刑者が、ガンの進行を放置され死亡したことの責任を追及する国家賠償請求訴訟が提起された。受刑者は死亡しており、同人の損害賠償請求権を遺贈された弁護士が提起したものである。新聞によれば、受刑者が体重の激減や食道の痛みを訴えていたにも関わらず徳島刑務所はこれを放置し、2017年12月にようやく食道ガンと診断、大阪医療刑務所に移送したが、もはや緩和ケアしかできない状態まで進行しており、18年4月に死亡したというものである。状況は星野さんと全く同じである。
 星野さんは、無実を訴えるとともに、受刑者全体に対する処遇改善を求めていた。その地道な訴えが、不十分ながらも冬のカイロの支給などに結実し、星野さんは、徳島刑務所の受刑者からも尊敬される存在だった。星野さんは、常に言っていた「誰もが人間らしく生きられる社会の実現」を、刑務所でも実践していたのである。
 証拠保全と今後の国家賠償請求訴訟は、星野さんの死の真相究明と責任を追及するものである。同時に、劣悪な刑務所での医療の実態を明らかにしていくものであるが、これは星野さんの遺志でもあると思う。
 一方で再審闘争を継承し、再審無罪を勝ち取り、星野さんに無念の死を強いた責任を追及するために、ともに全力で闘っていきましょう。



   星野新聞第80号 掲載
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