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最低限の医療もしない徳島刑務所
星野さんの命と健康を守れ
医師 吉川健明


1 星野さんの現状
 星野さんは、昨年夏、急な腹痛で作業中に倒れた。胃カメラの検査は受けられたものの依然として食欲低下は続き、体重は50㌔になった。以前55㌔以上あった。暁子さんをはじめ、家族、友人が心配している。悪性疾患などで手遅れになったらどうするのだ!最も問題なのは、検査結果も診療内容も本人、家族、弁護団に開示しないことだ。そして、医療の選択権さえ完全にないがしろにされている。この二つは、現代医療の最低限の原則なのに刑務所、刑事施設でこれが守られていない。

2 刑事施設医療の非人間性
①多発する感染症

 昨年11月、名古屋刑務所で結核が発生し、受刑者5人の感染が確認され、治療を受けたことが明らかになった。
 今年になって同刑務所で、インフルエンザが多発し、職員、受刑者300人以上が罹患、工場も閉鎖された。今年は特に刑務所でのインフルエンザの発生がひどく、2月には島根の刑事施設で130人以上のインフルエンザ発症が報告されている。これは、集団発生というレベルを超えたパンデミック( 大流行) でその影響は当然刑務所内だけの問題ではない。
 星野さんのいる徳島刑務所でもインフルエンザが流行し、工場が閉鎖されたそうだ。横浜刑務所にいる須賀武敏さん(下記記事参照)によると、インフルエンザ流行にもかかわらず、マスク着用が禁止された。手洗い、うがいの励行も不徹底で、極め付きは、風邪症状を呈しても、風邪薬を出すだけで、インフルエンザの迅速検査をやらない!
 厚生労働省発行の「刑事施設における結核対策の手引き」( 2013年発行)によると日本の刑事施設における結核発症の有病率は、220と一般の10倍以上だという。さらに、担当地域の保健所は十分実態を把握していない。
 結核は昔の病気ではなく、世界中で億単位の人が罹患する第1級の感染症だ。刑事施設や老人施設、ホームレスなどの免疫力の低下した弱者の潜在感染者が再発し、そこで、不潔な環境や、集合的環境、栄養状態の悪化などで感染が広まると言われている。
 さらに問題なのは、結核の初期症状は風邪症状だということである。須賀さんの手紙によるとインフルエンザの迅速検査もせず、ただ申告通りに風邪薬を与えるだけでは当然、結核も他の疾患も鑑別も何もせず放置される。工場閉鎖の場合、暖房のない部屋での自習が強要され、余計に症状悪化と感染の広がりが増したという。刑事施設の一人当たりの医療費予算は矯正という名のもと国民医療費の5分の1に抑えられている。そのため、予防接種も迅速検査も十分に出来ず、結核対策どころではない。

②医学的に低水準な扱い
 一般的な感染症対策でさえこの有様だから、救急対応や悪性疾患などへの対策など当然刑事施設では十分に取られていない。国民医療費の5分の1しか予算を取らず、検査結果も診療結果の情報提供も適用除外として公表を拒否している。
 須賀さんも椎間板ヘルニアの重病を抱え、受刑生活が困難と診断されるなか、昨年3月に治療も可能な医療刑事施設へいったん入所後、突然現在の横浜刑務所に移動させられた。そこではヘルニアへの対策として最低限必要なベッド対応もなくコルセットさえつけることを禁止され、インフルエンザ流行にもマスクも禁止とデタラメな「医療虐待」が行われている。
 こうした扱いは、刑事施設だけでなく、入管施設でも見られることで、憲法36条の「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」に明確に違反し、国連人権条約にも反することだ。
 星野さんの命と健康を守るため、更生保護委員会は仮釈放を認めよ。徳島刑務所は受刑以後の全てのデータを本人、家族、弁護団に開示せよ。