11-27星野全国集会へのメッセージ
無実のゴビンダさんを支える会   今井恭平

11-27星野全国集会にお集まりの皆様。無実のゴビンダさんを支える会・事務局の今井と申します。本日は直接皆様にお目に掛かり、ご挨拶申し上げる予定だったのですが、不本意ながら欠席せざるを得なくなり、こうしたかたちでメッセージをお送りすることをお許し下さい。
 
星野文昭さんが、沖縄を米軍基地として永続化させる返還協定批准に反対して渋谷闘争をたたかった日から実に40年が経過し、彼が獄中に捕らわれてからも37年の年月が経過しました。たんにその歳月の長さだけではなく、その年月の中で、いかに多くの民衆の血が流されてきたかを思いおこさずにはいられません。
当時の沖縄米軍はベトナム侵略の先兵であり、日本での沖縄闘争は、その米軍のベトナム侵略と直接対峙するたたかいでもありました。その後も今日のアフガニスタン、イラクにいたるまで米軍が世界のありとあらゆる場所で、もっとも凶暴な主権侵略軍隊であることを証明し続けているのが、この40年間の歴史だと思います。
しかし今、ウォール街占拠闘争に端的に見られるように米国内部での矛盾の爆発は、その本国での民衆のたたかいが決して消し去ることのできないものであることを示しています。それは、元ブラックパンサーの闘士であり、死刑囚監房からアメリカの不正義と欺瞞を告発し続ける不屈のジャーナリスト、無実の死刑囚、ムミア・アブ=ジャマールが信じ続けてきた民衆の底力の真価でもあります。
この40年間、星野さんのたたかいは、彼らとともにあり続けてきました。歴史にとって40年はあっという間ですが、一人のたたかう人間にとって、獄中での年月は想像を超えた困難の連続であると思います。いまこの瞬間も、刑務所の些末な規則や不合理なシステムによって、懲罰や面会の禁止・制限や再審への妨害が行われています。これを乗り越えて、獄中と獄外の連帯・連携を実現してきた支援の皆様のご尽力に敬意を表します。
 
私たちが支援してきたゴビンダ・プラサド・マイナリさんの冤罪事件では、報道でもご承知のとおり、今年7月に明らかになったDNA鑑定結果、9月にさらに検察が隠し持っていたことが明らかになった42点もの未開示証拠からも、無実を証明する証拠が次々と発見されています。その詳細をお話しする余裕はきょうはありませんが、一つだけ強調したいのは、これらのいわゆる「新証拠」は実は「新しい」ものでも何でもないということです。
DNA鑑定は、事件当時の技術水準では不可能だったなどと足利事件のときと同様の言い訳が繰り返されています。しかし、今日と同様の鑑定技術は2003年には科捜研レベルにまで普遍化されていました。ゴビンダさんが再審請求した直後には、この鑑定を行うことが可能でした。
さらに、9月に明かされた事実−−−被害者の身体からゴビンダさんとは異なる血液型が発見されていた−−−という鑑定書の日付は、驚くべきことに1997年4月3日、つまりゴビンダさんが別件逮捕されてはいたが、まだ強盗殺人では逮捕すらされていない時期のものだったのです。警察・検察はこの無罪証拠を握りつぶしたままで逮捕・起訴し、有罪論告を行っていたのです。これは明かな犯罪行為であり、これが暴露されただけで、ただちに無条件に有罪判決を破棄し、一審無罪判決を確定させ、ゴビンダさんを家族の待つネパールに送り返すべきだと考えるのが、当たり前だと思います。しかし、星野さん支援を長年たたかったこられた皆様にはお分かりのとおり、こうした庶民の常識は司法の世界ではまったく通用しません。
したがって、まだまだ私たちのたたかいは続かざるを得ません。ゴビンダさん自身も「これほどまでに無実の証拠が次々と出てきているのに、なぜまだ私はここ(刑務所)にいなければならないのか」と言っています。ネパールの家族も同様のことを私たちに言います。私たちはどう答えてよいのか、しばしば言葉に詰まるほどです。
星野暁子さんには、夫を無実の罪で獄中に捕らわれている、という同じ境遇にあるゴビンダさんの妻、ラダ・マイナリさんへの温かいお心づかいやご心配をたびたび頂いています。
ラダさんの夫は、必ずもう少しで冤罪を晴らし、無実の人間としてどうどうと家族のもとに帰ることができます。暁子さんの夫もまた、近い将来同じことが起きると信じています。
私たちがゴビンダさんの支援を初めた当初は、こういう日が来るのは20年、30年先かも知れないと思っていたことも事実です。しかし、検察の証拠開示さえ勝ち取れば、そこには無実の証拠が山のように存在し、事態は急展開するのです。
再審請求事案では、いずれも証拠開示によって大きな前進が勝ち取られています。
袴田事件は、来月22日までにはDNA鑑定結果が明らかになる筈であり、有罪認定の柱とされた「5点の衣類」のねつ造が白日の下にさらされる可能性が強くなっています。名張毒ぶどう酒事件でも、ニッカリンTの再製造、再鑑定により、混入されていた毒物はニッカリンTではなかったことが明白になりました。福井女子中学生殺害事件では、開示された供述調書や医学鑑定から、虚偽告発者の供述の信用性が完全にくずれ、今月末にも再審開始決定が出る見通しです。
星野さんの再審でも、無罪が決定的になる写真が開示されたと聞いています。検察が、無罪証拠を隠したまま有罪を主張するというデタラメな不正義をこれ以上許しておくことはできません。狭山事件でも、証拠開示がすすんでいますが、まだまだ多くの証拠が隠されています。
すべての再審請求で、検察が隠し持つ全証拠を開示させ、無実の人たちを一刻も早く獄外に取り戻さなければなりません。そういう意味で、すべての冤罪闘争は一つにつながっています。
星野さんの一日も早い再審開始決定、そして何よりもまず身柄の自由を取り戻すことが必要だと思います。布川事件でも、桜井さん、杉山さんがたとえ仮釈放という形であれ、外に出て直接訴えてきたことが大きな力となったことは明らかだと思います。
星野さんを取り戻し、刑事裁判の中でも正義を勝利させていくために、私たちのたたかいも一緒に歩んでいきたいという気持ちを表明し、ご挨拶に代えさせて頂きます。
 
2011年11月27日           今井恭平